第111回看護師国家試験 総評


コロナ禍の中での第111回看護師国家試験を受験された皆さん、お疲れ様でした。

必修問題については、過去問にしっかり取り組んでおくと得点できる問題が多かったという印象ですが、一部採血の問題などは、テキストだけでなく、厚生労働省の通知や日本臨床検査標準協議会による標準採血法のガイドラインなどについても確認しておく必要があります。また例年、統計データは2、3年前位のものが出題されてきましたが、今年は多死時代に突入するといわれている日本を踏まえて、40年以上先の将来推計人口を問う問題までも出題されており、高齢化社会を鑑み健康寿命の定義も問われました。

一般問題については、コロナ感染が拡大している社会状況との関連性からか、ワクチン接種後の抗体産生の生理学的問題が出題されていたり、多重債務、貧困、虐待、自殺などの社会問題を背景として新しく制定された法律の問題も出ました。高齢者虐待に関する調査では、設問には表現がありませんでしたが、職員による虐待も多く見られている現実があり、厚生労働省が出題を通して看護師に倫理的に訴えかけているとも受け取れます。また、2022年度から看護基礎教育のカリキュラムが改正され、そのポイントの一つが地域・在宅看護学の充実です。その背景から地域連携、地域包括支援センターの目的などが出題されていました。
他に、過去問の問い方を変えて出題されたもの(午前37;バレー徴候など)、設問を一部変更し過去問が再度出題されたもの(午前81;心電図、午後57;母体から受け取る抗体、午後58;第二次性徴、午後59;学童期の肥満など)もありました。そして、言葉・人名として、ボディメカニクスでトルクの原理、START法によるトリアージ、ルービンが示した母親役割獲得過程、シャルコー3徴、ハヴィガーストやエリクソンだけでない発達課題論者名が出題されていましたので、幅広く文献学習し過去問を解いておくことが必須です。また全体を通して、看護師の説明、指導、対応、優先度の判断の出題が多かったのは例年通りです。

計算問題は、注射薬の他、珍しく小児の体重減少率が出題されていました。出題形式としては、5肢択1が23問、5肢択2が12問、他は全て4肢択1で、例年に比べて5肢択2が減りました。5肢択2の問題は正答率が低くなる傾向がありますので、今回の5肢択2の減少がどのように影響するのか注目です。

状況設定問題は、午後118、119が2連問、午後120が単問でした。午後には近年の自然災害多発を受けて、災害時の多重課題時の状況設定問題が出題されていたことは目新しい出題といえます。状況設定問題に対しては問題の読み取りに時間を要するため、在学中から模試の問題に取り組み、国試の傾向に慣れておくこと、そして時間配分の調整をした上で実際の国試に臨むことが大切です。

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