第112回看護師国家試験 総評
3年目のコロナ禍の中で第112回看護師国家試験を受験された皆様、お疲れさまでした。
新出題基準からの問題
―大項目:「地域における看護師の役割」を問う問題
今年度は、令和5年版の新しい看護師国家試験出題基準が適用されましたが、出題基準改定の目玉の1つとして、「在宅看護論」が「在宅看護論/地域・在宅看護論」という表題になり、地域における様々な場での看護の理解が求められるようになりました。
医療的ケア児の支援体制を問う問題(午前115~117)にその出題意図がみられ、次年度以降も地域における看護師の役割を問う問題は増えていくことが予想されます。
―小項目:「新規の項目」からの出題
また、細胞内受容体(午前26)や心周期(午後26)など、新たに追加された小項目からの出題もありました。鶏眼(うおのめ)(午後93)など、選択肢として出てきた小項目もありましたので、新出題基準で追加された項目を知っておくことも大切です。
―その他:「新出題基準以外」の知識のアップデートを要する問題
なお、定期予防接種のロタウイルスワクチンが午前85の選択肢で出てきましたが、国試頻出の予防接種に対する知識がアップデートされているかを試されている問題ともいえます。
5択問題の数
―「5問ほど増加」したが、知識が定着していれば迷わない問題
出題形式としては、5肢択1が26問(うち状況設定問題1問)、5肢択2が15問(うち状況設定問題5問)と、昨年と比べて5問ほど増えましたが、今年度の5肢択2は知識が定着していれば、選択に迷わない問題が多いように感じました。
必修問題
―「各指標」や「看護師の活躍の場」についての理解が必要
必修問題については、過去問にしっかりと取り組んでおくと解答できる問題も多かったという印象ですが、健康に関する指標や健康に影響する要因などについては、国民生活基礎調査や生活行動・習慣と疾患を関連付けて学習しておく必要があります。看護師の働く場所を問う問題も出題されており、看護師の活躍する場の多様性を捉えなくてはなりません。
―「感染」に関する必修問題は4問
新出題基準に、「感染防止対策に関する項目の充実を図った」とありますが、今回の必修問題では感染に関する問題が4問出題されました(午前20、21、午後15、22)。今後もいろいろな切り口で問われることが考えられますので、対策は怠らないようにしたいものです。
一般問題
―「各疾患における症状・検査・薬物の作用」と「看護師の対応・ケア」の理解
一般問題については、疾患における症状や検査、薬物の作用、その対応が多く問われていましたので、領域別の疾患とともにどのような症状が主となるか、どんな検査が適応されるか、その時の看護師の対応や看護ケアについてしっかりと学び、知識として定着しておくことが重要です。
―「複数の法律の関連性」、「世帯、家族に関連する調査結果」を捉える
法律の問題は、法的根拠とその組み合わせのほか、法律内容の重複性も出題され、1つの法律だけではなく複数の法律の関連性を覚える必要があります。
一般問題においても、厚生労働省の「国民生活基礎調査」、「人口動態統計」や内閣府調査の「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」などが出題されており、家族形態や個々の生活様式が多様化する現代においては、世帯、家族に関連する調査結果を捉えておく必要があります。これらの調査は毎年実施されるものと何年かに1回調査されるものがありますから、日本の社会状況を把握することも必要です。なお、賃貸住宅に住んでいる高齢者がいる世帯の割合(午後53)は、「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」からの出題ですが、「国民生活基礎調査」の世帯構造別にみた65歳以上の者のいる世帯数とは結果が異なりますので、解答に迷った受験生もいたのではないでしょうか。
「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」➡単独世帯が最多
「国民生活基礎調査」➡夫婦のみの世帯が最多
状況設定問題
―「災害時の体制や連携、看護」を押さえておく
状況設定問題は、過去問で出題されている疾患が多くみられました。午後には今年も災害時の問題(午後118~120)が出題されており、一般問題午後71と合わせて災害時の体制や連携、看護について捉えておきたいものです。
―「看護実践能力」を問う問題が増加している
コロナ禍における臨地実習制限が今後は緩和し、多くの患者さんから、病態生理や看護診断、看護実践を学ぶことになるでしょう。今回の国試でも看護実践能力を問う問題が増えていると感じましたので、患者さんの状況をしっかりイメージし、長文を読み取る力を付けながら国家試験に臨むことが大切です。
トピックス一覧へ