第113回看護師国家試験 総評

 

第113回看護師国家試験を受験された皆様、お疲れさまでした。

新出題基準からの問題

―小項目(キーワード)より詳しい表現や異なる表現での出題
 今年度は、令和5年版看護師国家試験出題基準が適用され2年目となりました。今回は共同意思決定(午前問題64)やポリファーマシー(複数の服薬への指導;午後問題67)、嚥下障害(午後問題14)などが出題されました。出題基準の小項目(キーワード)より詳しい表現や異なる表現で出題されることもありますので、出題基準の確認は引き続き重要と言えます。


5択問題の数

―5肢問題でも知識が定着していれば、選択に迷わない
 出題形式としては、5肢択1が21問(うち状況設定問題2問)、5肢択2が17問(うち状況設定問題1問)と合計数的にはおおよそ例年並みの出題でした(前回112回比5肢択1が5問減、5肢択2が2問増)。5肢択2については状況設定問題では減、一般問題が増となっています。ただし、選択肢が多いとはいえ、知識が定着していれば、選択に迷わない問題が多いように感じました。


必修問題

―国試初出問題が多く、例年より難化も基本の学習が大事
 必修問題については、出題基準の「基本的な知識を問う」ことに沿って幅広く出題されましたが、初出と思われる問題も複数問あり、難しく感じられたのではないでしょうか。たとえば、上行大動脈から分枝する動脈(午後問題11)、坐薬の挿入方法(午前問題22)、AEDを使用するときに胸骨圧迫を中断するタイミング(午後問題23)などはこれまでみられなかった問題です。しかし、これらも「人体の構造と機能」「基礎看護技術」をしっかり理解しておけば、その知識を使って解答できる問題だったと思います。

―現代の家族状況や健康志向、看護師として働くときの義務と責任
 平均世帯人数(午前問題1)、喫煙者割合(午前問題6)のように「国民生活基礎調査」や「国民健康・栄養調査」からも出題されていますので、統計と合わせて現代の家族状況や健康志向を学習しておく必要があります。臨床研究の倫理指針(午前問題5)、看護師の業務従事者届(午後問題5)についても出題されており、看護師として働くときの義務と責任も捉えなくてはなりません。


一般問題

―一般問題でも状況設定問題と同様に看護判断能力を問われる
 一般問題については、どの領域からも満遍なく疾患における症状や検査、薬物の作用、その対応の問題が出題されていました。一般問題であっても状況設定問題と同様に、患者さんの現病歴やデータ、現在の状況を読み取り看護判断を求められる問題(短文事例問題)が多く出題されており、また今年は問題文がより長文となった傾向が見受けられます。疾病の病態の理解とともに、症状、検査、治療、その時の看護師の対応や看護ケアについてしっかりと学び、知識として定着しておくこと、また、問題文中の情報を正確に把握することが重要です。

―法制度、公衆衛生問題は日本の社会状況を把握する
 法制度に関する問題は、今年度は必修問題から一般問題まで多く出題され、高齢者の医療(午前問題51)や介護保険関連(午前問題4、午前問題68)等について出題されていました。制度と法的根拠の組み合わせはもちろん、その法律で規定されている内容とそれらをどこで使えるのか、だれが使えるのかなど社会保障制度と関連づけて覚える必要があります。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(午前問題1)や「保健統計調査」(午後問題29)、「身体拘束ゼロの手引き」(午後問題4)、「健やか親子21」(午前問題31)が出題されており、少子高齢化が進む現代においての介護者の特徴や妊婦、高齢者の権利にまで及ぶ指針や課題を知っておくと同時に、保健統計の調査項目や実施年など日本の社会状況を把握することも必要です。難しく感じやすい人名・言葉や理論、看護スケールについては、サイコロジカルファーストエイド(午後問題72)、ディストラクション(午前問題56)、リロケーションダメージ(午前問題49)、痛みのスケール(午前問題41)、ピアジェの認知発達理論(午後問題55)、ボウルビィの愛着理論(午前問題54)などが出題されていましたので、看護用語や理論だけではなく心理的応急処置、ストレス軽減、環境変化への適応などについても幅広く学習し、どのような言葉が使われているのか、どのような場面で適応されるのかを知っておくことが必須です。
 画像・図形問題は、別冊以外に問題の中でイラストとして出題されたものが多くありましたが、ほとんどが過去に類似問題が出題されていますので、心音の聴取部位(午前問題34)などの頻出テーマは活字の問題文や選択肢だけでなく、視覚的に覚えることも必要となります。


状況設定問題

―退院後の指導、終末期の患者支援、家族支援は例年通り出題
 状況設定問題は、過去問で出題されている疾患が多くみられました。退院を見据えた問題(午前問題95、96)、終末期の家族の心理的状況への対応問題(午前問題117)もあり、病院から地域に帰った時の患者支援や家族支援について捉えなくてはなりません。

―災害時に起きやすい疾患や心理的変化、災害時の対応と看護について押さえる
 午前には、今年も災害時の問題が出題されており、災害後の子どもの心のケア(午前問題72)、避難者に発生しやすい健康被害(午前問題73)のほか、トリアージ(午前問題23)、AEDの取り扱いと作用(午後問題23)など、災害時に起きやすい疾患や心理的変化、災害時の対応と看護について捉えておきたいものです。
 出題の問いかけや選択肢の文言はしっかり読み込まないと理解に時間がかかる問題も多くなりましたので、問題をよく読み、持っている知識を総動員して考えることも大切です。

―看護判断能力や看護実践能力を問う問題は増加する
 今年度よりコロナ禍における臨地実習制限が緩和され、多くの患者さんから病態生理や看護診断、看護実践を学ぶことができるとともに、家族との関わりから学べることも増えました。看護判断能力や看護実践能力を問う問題がますます増えると予想されるので、患者さんの状況をしっかりイメージし、長文やデータを読み取る力を付けながら国家試験に臨むことが今後も大切です。



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