第115回看護師国家試験 総評
![]()
第115回看護師国家試験を受験された皆様、今年はインフルエンザが流行している中、感染対策や体調管理をされての受験だったことと思います。お疲れさまでした。
過去問のアレンジが目立った115回
…ポイントは選択肢を掘り下げて学習すること…
今年度は、「令和5年版看護師国家試験出題基準」に基づくという基本的なところはもちろんですが、過去問を適用して質を変えて出題されていたように思います。今までどのような問題が出題されていたのか、近年の出題傾向を捉え、その選択肢一つひとつに答えられるような学習が実を結ぶように感じました。また、地域で生活している対象者が安心して安全に暮らせることを目指して出題されている問題も多かったと思います。
5肢問題の数は例年より増加
…幅広い分野からの出題のため知識の定着と応用が必要…
出題形式としては、5肢択1が21問(うち必修問題4問、状況設定問題1問)、5肢択2が20問(うち状況設定問題4問)と合計数では昨年よりやや多い傾向でした(前回114回比5肢択1が6問増、必修問題にも4問)。
今年度の5肢択1および5肢択2は、問われている症状や言葉の意味・内容を押さえておけば選択に迷う問題は少なかったのではないでしょうか。ただし、人体の構造や機能で学習した解剖学、疾病の成り立ちと回復の促進で学習した疾患、法律と制度など幅広い分野からの出題でしたので基礎をしっかり身につけた上で、知識を応用して解答を導き出すことが必要となっていました。
必修問題
…過去問対策が引き続き重要! 5肢択1問題が増えたのは要注意…
必修問題については過去問からの出題も多く解きやすかったと思います。しかし、レム睡眠の特徴(午前問題3)や酸素マスクの種類(午前問題22)、対光反射に関与する神経(午前問題25)のように久しぶりに問われるものや臨床の場であまり遭遇しないものもあり、午前中はやや難しいと感じながら解いたのではないでしょうか。
午後は、過去問の類似問題が多くあり解きやすさはあったと思いますが、頸神経の対の数(午後問題12)、心房細動の病態(午後問題14)、口腔内吸引の手技(午後問題22)のように選択を迷う問題もありました。
今年は統計問題が少なくなった印象もありますが、乳幼児から高齢者まで疾患も含めて幅広い学習が必要です。また、5肢択1問題が午前2問、午後2問の4問が出題されました。今後5肢択1問題が増えるのか、注目していきたいと思います。
一般問題
…短文事例は高齢者の問題が多く、ADLの理解が問われた…
一般問題は、どの領域からも満遍なく、疾患における症状や検査、薬物の作用、その対応の問題が出題されていました。今年度は短文事例問題のうち4問を日常生活動作〈ADL〉に関連した高齢者の問題(午前問題45、午前問題59、午前問題80、午後問題58)が占めていました。その中で、国際生活機能分類〈ICF〉(午前問題80)や1日の過ごし方の図(午後問題58)のように対象者の身体状態や生活状況を判断しなくてはならない問題もありました。
…言葉だけでなく、内容の把握が大事…
難しく感じやすい人名・言葉や理論では、ラザルスの情動焦点型ストレスコーピング(午前問題67)、ヤーロムの集団精神療法(午前問題69)、タイムアウト(午前問題87)、レスパイトケア(午後問題47)が出題されていました。ストレスコーピングモデルとして問題焦点型と情動焦点型、集団精神療法の11の治療的因子、安全確保手順としてのタイムアウト、介護家族の休息支援サービスのレスパイトケアについて、言葉だけではなく内容をきちんと把握しておくことが必要です。
…受験生を慌てさせた統計問題の計算式…
統計問題では、日本の人口動態統計の中でも死亡率と計算式の組合せが出題されました(午前問題64)。選択肢のすべてが母子保健統計でしたので、それぞれの死亡率の値を覚えていた人は慌てたのではないかと思います。言葉の定義とともにどの死亡数を何で割り、対何人の計算かそれぞれの死亡率の値だけでなく計算式も覚える必要性を示した問題でした。
計算問題、画像・図形問題
…計算問題にはいくつかのパターンがある…
計算問題は、点滴の滴下数(午前問題90)のみでした。点滴の滴下数や点滴にかかる時間はよく出題されますので算出方法をしっかり覚え、落ち着いて計算しましょう。計算問題には、点滴の滴下数、必要な薬液量、酸素ボンベの使用可能時間、BMIなど、いくつかのパターンがあります。過去問や模擬試験の問題を数多く解いてマスターしておきましょう。
…画像・図形問題は実習での経験が活きてくる…
画像・図形問題は、別冊以外に問題の中でイラストやグラフ・表として出題されたものが多くありました。胆嚢炎の腹痛部位(午前問題13)、腰椎穿刺の体位(午前問題16)、酸素投与器具(午前問題22)、股関節運動(午前問題34)、呼吸パターン(午後問題20)、1日の過ごし方の図(午後問題58)、精子形成過程(午後問題77)については教科書・参考書で見たことがあるものばかりです。イラストだけではわかりにくいものもありますので、実際に体を動かしたり実習で触れたりして覚えることも国試対策につながります。
状況設定問題
…問題文中の情報を正確に把握しアセスメント能力を高める…
状況設定問題は、過去問でもよく出題されている疾患がほとんどでした。今年は文章が長めで細かい検査データが示されている問題もみられましたが、選択肢はシンプルでした。患者さんの現病歴やデータ、現在の状況を読み取り看護判断を求められる問題と実践的な看護を選択する問題が増えています。家族への対応の問題(午前問題93、午前問題101、午前問題107、午前問題117、午後問題102、午後問題104)も多く出題されました。
疾病の病態の理解とともに、症状、検査、治療、その時の看護師の対応や看護ケア、そして対象を支える家族への対応についても学びを深め、知識として定着しておくこと、また、問題文中の情報を正確に把握しアセスメントすることが重要です。
…「災害看護は必ず出る」と思って臨もう…
今年も災害時の問題が出題されており、一般問題(午前問題59、午前問題68、午前問題72、午後問題73)と合わせて災害時の看護師の役割、災害時の優先順位の判断、災害時に起きやすい疾患や心理的変化、心のケア、災害援助法など実際にイメージを膨らませながら捉えておきたいものです。災害看護の問題は必ず出題されると思って対策しておくことをお勧めします。
…状況設定問題対策のキーワードは“情報整理”と“読み取る力”…
今後も、しばらくは看護判断能力や看護実践能力を問う問題が増えると同時に、地域で暮らす対象者へのケア、法律との関連も多く出題されるようになると予測できます。情報を整理してアセスメントしながら患者さんの状況をしっかりイメージし、長文やデータを読み取る力のほかに社会情勢にも目を向け、国家試験に臨むことが大切です。